夫婦共に、NakamuraEmiの大ファンです。
2019年2月20日、前作アルバムから約11か月を経て、メジャー3枚目のアルバムが発売されました。今回はそんなNewアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6」の私的感想を綴りたいと思います。
全曲大好きなので、ながーいレビューになりそうです…。悪しからず。
【注記】
NakamuraEmiのアルバム名は全て「NIPPONNO ONNAWO UTAU」とされ、Vol.X とナンバリングされていますので、以降、各アルバムを、Vol.Xと表記します。
また、当エントリー内での引用で引用元を記載をしていないものは、「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6」内の楽曲歌詞からです。
【想いが強すぎて吐きそう】の意味
記事タイトルにもした「想いが強すぎて吐きそう」の言葉。実はこれ、Vol.6を初めて聞いた夫の一言。
メジャーデビュー後1作目であるVol.4では、彼女の楽曲の元々のテーマとされている「女性」にフューチャーしています。続くVol.5では視野(テーマ)が広がった感じで、当時の社会を風刺したような曲も多くなりました。
しかしこのVol.6。
原点回帰して、さらに色濃く「女性」を唄っています。いや、「女性」というより「NakamuraEmi」なのかな。
同姓そして同年のわたしからすると、もう首がもげるほど強く頷きたくなるほどに共感できる曲ばかりです。それが男性から見ると、未知の感覚すぎて「想いが強く」て「吐きそう」になるのかもしれない(笑)。
夫は通勤するの車の中で聞いたそうですが、帰宅して開口一番でこれを言われたので、わたしには強烈な印象を与えました。
それほどまでに強いメッセージをもつアルバム、ぜひ感想を残しておきたいと思いました。
Webサイトのインタビュー
なお、vol.6の発売に伴い、Webメディアでも複数のインタビューがアップされているので、お時間ありましたらぜひ。
個人的には、 Popsceneと、GOETHE~野村雅夫のラジオな日々が好きな記事です。ライターさんの愛を感じました♡
NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6|1曲ずつの感想
M1:バカか私は
初っ端からノリノリテンポの曲ですが、やはりそこはNakamuraEmi。ノリの良さの中に、グサッとくる歌詞が隠されています。
冒頭の
大人になって尻もちついて転ぶのはなんでこんなに痛いんだろう
から、共感すぎます(笑)。
幼いころは転ぶのなんて当たり前で、それでも痛い!て叫んでひとしきり泣いて、そうすればすぐに前に進めたのに。年齢を重ねるごとに、転ぶことが、失敗することが怖くなって、それを引きずるようになってしまって…。
頑張って、頑張りすぎてしまって、気づいたらひとりで戦っていた。
そうして当たり前の小さな幸せが目に入らなくなって、感じられなくなってしまって。
そんな時にハッと気付いて我に返るかのような歌。
そんな大切なことを、大切な人たちをないがしろにして、バカか私は!なんですよね。
彼女らしくぐちぐち考えて(笑)、
それでもやっばり目分に期待なんてしながら
後海と未来を背負って 前に進むしかないじゃんか
ちゃんと怠けてちゃんと甘えて 前に進めぱいいじゃんか
なんて結論になって、歌詞の最後はこれ。
大人になって尻もちついたら もう笑っちゃってさ
誰かに手を伸ばしちゃえばいい
ひとりで頑張りすぎないで、もっと周りを見て、甘えて頼ってやってみたらどうかな?なんていう、彼女からのメッセージ。
ひとしきりがむしゃら頑張ってきた彼女だからこそ、肩の力を抜くことは決して怠けなんかではないんだよって言える気がする。
M2:雨のように泣いてやれ
アルバムのリード曲となっているこの曲は彼女の楽曲の中でも、相当にグルーヴィー。リズムもメロディも心地よく、響き続けるベースが素敵な曲です。
そんなこの曲を初めて聞いたのは、朝のラジオ。通勤中の車の中でした。
思わず踊りたくなるメロディーと、女の素顔を語る歌詞。やっぱさ、えみーご好き。
朝の通勤途中の車で初めて聞いた時は、泣いた。NakamuraEmiの雨のように泣いてやれ https://t.co/KcbkLOx8ri #NowPlaying #NakamuraEmi
— こるり (@koruri130) February 13, 2019
やっぱりね、まんまと泣いちゃったよ。
上司からいわれのないことを言われ、濡れ衣を着せられて、反論はしたものの悔しさと怒りで感情が昂って涙があふれたことがあった。そこで涙をこぼしたら負けだと思って、ぐっとこらえた。
女の武器として涙を流したらそれは反則だけど
そうじゃない涙も「卑怯」になってしまう
茨の道を今日も行け 生きてるだけで丸儲け
この曲を聞いた時、そしてこの歌詞が聞こえた時、グッと胸を押された気がして分かってくれる人がいたと安堵して、思わず涙がこぼれてしまった。運転中だってのに(笑)。
雨のように泣いてやれ 傘なんて素敵な男の子にあげちまえ
雨のように泣いてやれ へこんだ自分は水たまりに沈めちゃえ世界で一番いい香りの石鹸で どうせまた洗っちゃうんだからさ
雨女がくれた絶好のチャンスさ 雨に紛れて泣いちまえ
雨のように絶え間なく、ザーザーに泣いてしまえ。
そんなメッセージ。
それも、ほろりと泣くなんてレベルじゃない。
雨に紛れてしまうんだから、号泣だって構やしない。
空を見上げて顔中に雨を受けて、メイクが落ちたって構やしない。
涙も嗚咽も雨が消してくれる。だから、腹の底から泣いてしまえ!
時にはそんな泣き方をしたっていいじゃないか。
わたし雨女だから、雨降らせてあげるからさ、泣いちゃいな!
こんなお天気だからさ、顔も髪もぐしゃぐしゃになったって大丈夫。
ほら、今がチャンスだよ!
そう彼女が語りかけてくれているよう。
実際、彼女が出演するフェスは雨が多くて、それでもステージを見に来てくれる人はいて、男女関係なく涙を流すのだとか。
毎日思いっきり泣く機会を雨女の私は作れるかもしれません。
そんな言葉から彼女の優しさを、そして使命を感じずにはいられない。
M3:女の友情
女の友情って、実際どうなの?
そんな男性陣の疑問を払しょくするようなこの曲!聞くがいい、男性諸君よ!!!
陰ロがザワザワする中 抜けられな<なった輪の中
た<ましく育った女同土は 愛権を注ぎあえたら無敵だ
面倒な世界で出会ったから ちょっとやそっとじゃ動じない
綿あめみたいな世界が キャンディーのように強くなる
面倒な女社会で育ったからこそ、スクラムを組めたらガッチリ強い。それが女の友情!
一聴すると、ラストに来る盛り上がりの
女の友情ハムより薄い
がパワーワードすぎて耳に残るせいで、(;・∀・)オォー ってなるんですけど、ちゃんと歌詞は続いていて、
そうでもねーよ
捨てたもんじゃねーよ
なんですよね。
女をバカにすんじゃねーぞ!!!みたいなね。そんなすっぱりさっぱり感に溢れています。彼女曰く、
赤い糸なんかじゃなくてへその緒みたいな強い女の友情をハムより薄いなんて言わせません。
とのこと。
まあ、わたしはそこまでの思いを持てる女友達には出会えませんでしたが…(´;ω;`)
余談ですが、この作りはまるで竹原ピストルさんの「よー、そこの若いの」のようです。最初に来るワードが強すぎて、次を聞き逃しそうになる。
よー、そこの若いの 俺の言うことをきいてくれ
「俺を含め、誰の言うことも聞くなよ。」
竹原ピストルさんを尊敬していると公言しているNakamuraEmiですから、もしかしてオマージュ??なんて思ったり。
M4:いつかお母さんになれたら
結婚をして実家をでてから、両親、特に母に対しての思いというのは強くなった気がするんですよ。それはやはり、いずれ自分が「母親」というものになるかもしれないから、かもしれない。
ですが結局、結婚から7年経って37歳になったいま、まだ「母親」にはなっていない。そんなわたしにとってはグッとくる曲でした。
私は「出産」というものをこの人生で経験出来るか出来ないかはわかりません。
「孫」を親に見せてあげられないかもしれません。
でも
大好きな仲間の子ども達が今ここにいてくれる奇跡は
不思議なくらい私にものすごい力をくれているのです。
こんな彼女の気持ちが、本当によくわかる。
ひとしきり、「もしもお母さんになったら、こんな風に子供を育てたいな」と語った後、「なんちゃって」と茶化してしまう気持ちすらも、よくわかる。
なれないかもしれない お母さんには
ならないかもしれない お母さんには
母が私を産んだ痛みや気持ちは
一生わからないかもしれないそしたらその分
そしたらその分
そしたらその分
誰かの頭をたくさん撫でてあけよう
奇跡を侵しく抱きしめてあげよう
そしたらその分、お母さんになった友人を、同僚を、少しでも助けてあげたいな。わたしはそう思うのです。できていると、いいな。
先に紹介したインタビューでも触れているものが多いですが、この曲は男性にしてみたら「重い」みたいですね。「子供を産めるか産めないかわからない」という言葉が、ずっしりくるのかな?
恐らく妙齢女性で子供がいない方は、だいたいが同じような感情は抱いていると思うし、だからと言って重いつもりはなくて。
それはもう、運やタイミングや条件の問題で。それよりは今目の前にある、小さな命を大切にしようっていう。そういうことなんですよね。自分の中で処理はできている。
だから男性陣、大丈夫です。これは、重い曲じゃないです(笑)。
※もちろん、人によっては切望したけれど得られなかったから、逆に見ることもできなくなってしまう人もいるかもしれないけれど。それはまた、別の話。
M5:おむかい
暮らしの中での人間関係・社会との関係性を歌ったこの曲は、本人もインタビューで「前作の「新聞」の続編みたいな感覚もあります」と言っているほど。
現在36歳の彼女が幼いころには当たり前のようにあった、おむかいだけでなく、ご近所さんとの関係性を懐かしむようにして歌われていて。
子どもの頃「何かあったらおむかいさんに行くんだよ」って
ご近所中でさ ご近所中をさ 子ども達もさ 守っててさ
そういえば、小さい頃はこんなだったよなぁって、ふわりと蘇る感覚。ノスタルジックで、少しくすぐったくなる。
自分の友達が近所にいて、両親同士も顔見知りで、顔を合わせれば挨拶もするし、何かあれば声をかけたりもする。自分たちが親元を離れてい行くのと比例して、そんな付き合いも薄れてしまったかな…。
今の時代、ここまでの付き合いはもう無理かもしれない。みんな警戒心をもって、深い人間関係を患わく思ってしまう時代だ。
それでも、
まずはあのご天婦がしてくれたように
寂しかった私にしてくれたように
挨拶だけでもいいじゃないか
挨拶だけでもいいじゃないか
そうだね、まずは、挨拶から。
なお、↓のインタビューは歌詞に登場するお店「おむかい」で行われていて、彼女がすんなりお店に溶け込んでいる様子が伺えます。
こんな飾らない彼女だからこそ、おむかいさんからもご近所からも、愛されるのだよね。
M6:痛ぇ
この曲を初めて聞いたのは、2018年の中津川ソーラー武道館でした。尊敬していると公言する、竹原ピストルさんへの歌。
竹原さんのライブが言葉が、そして竹原さんの存在が、どれだけアーティスト・NakamuraEmiを鼓舞し、引っ張り続けているかがわかる。
ヒューマンビートボックス(カサリンチュのコウスケさん)を加え、カワムラさんのギターとの相乗効果で、生々しくアグレッシブさに溢れていて、このアルバム内でも飛びぬけて熱量が高く暑苦しく、めちゃくちゃ格好いい曲です。
レコーディングでは、臨場感を求めて普段のライブのように体を動かしながら歌って録ったそうで(インタビュー情報)、より生々しく仕上がったのかな、と。
先の中津川での感想にも書いたけれど、これに尽きる。
わたしが「NakamuraEmi」を初めて聞いて心を撃ち抜かれるほどの衝撃を受けたように、涙が止まらなかったように。それと同じようにえみーごも、「竹原ピストル」と出会ったことで人生が変わるほどの衝撃を受けたんだと、この新曲を聞いて感じました。
M7:甘っちょろい私が目に染みて
このvol.6内で、いちばんグッときたのがこの曲です。
出だしのこの歌詞でもうやられてしまう。
女の子に生まれてきた辻棲を 合わせるように
1000円で買ったワンピース 皆振り返る
ここにどれだけの思いが詰まっていることか。
女の子に生まれてきた辻褄
わたしたち女は、まさに辻褄を合わせるために、化粧をし、スキンケアと美白をし、スカートを穿き、ヒールを穿く。
そうじゃない?そうだよね?わたしはそうだよ。
頑張って頑張って、周りと戦って。そんな自分を抱きしめてあげる、そんな歌。
女の子に生まれてきた辻棲を 合わせるように
花のようなワンピースを着て 私は下手なダンスを
下手なダンスだっていい。それがわたしのダンスだから。それを愛おしんであげたいんだ。自分で自分を、慈しんであげたいんだ。
M8:相棒
前アルバムのツアー中から、約8か月間、Volkswagenとのコラボレーションソングを作るため、Golfを借りて生活していたとのこと。
インスタにも度々登場していたので、ファンの間では周知されていたかな、と。
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そんなGolfとの生活から生まれたこの曲は、日常的に運転するわたしにとって、共感が強い曲でした。
車を、単なる物でも友達でもなく「相棒」と呼び、辛い時も寂しい時も愚痴りたい時も、ただ黙って受け止めてくれる、懐の広い大切な存在として歌っています。
全部ここだけの話
全部君しか知らない
何も言わずに前に進むの 君は得意でしょ
長時間の移動は憂鬱かもしれないけれど、ひとりの時間をもてる、大切な空間。
ひとりで気ままに過ごして、ただ運転に集中して、頭の中もクリアになってくる、そんな時間。
運転好きな人なら、ドライブのお供に最適ですね、この曲は。
やわらかな曲調も相まって、そんな優しい相棒と彼女との関係は、思わず微笑みが溢れます。
私と君の毎日
私と君め毎日
明日も一緒にあの町へ
大切な相棒と一緒にこれからも先へ先へと進む。柔らかな視線で前を向いているのが想像できる、アルバムの終わりに相応しい素敵な曲です。
NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6|全体の感想
今作は、作曲にプロデューサーであるカワムラヒロシさんが加わり、いままでとは違ったアプローチでの曲作りもあったそうです。
そのためなのか、曲調がバラエティに富み、彼女が表現したい世界があれこれ顔を変えて現れてきます。
それでもしっちゃかめっちゃかにならないのは、彼女の伝えたいものがブレないからだと思う。
弱さを見せてこそだと考えているように感じる彼女の曲たちは、嘘が一切なくて、生身で、感情剥き出しでガンガン向かってくる。
それこそ、
あなたを見てると自分が情けな<て あなたを見てると疲れちゃうんだけど
あなたを見た後はいい目をしてて あなたに出会えて艮かったと思って
である。
小さくて愛らしい見た目とは裏腹に、相変わらずめちゃくちゃ格好いい女だと思う。
あとは単純に、曲がすごくいい。
個人的に、プロデューサー・カワムラヒロシさんのギターがめちゃくちゃ好きなので、acousticライブのチケットを手にできたのがとてもうれしい。
これからツアーを周り、このアルバムの曲たちを歌いこみ、どんどん深みが増していくのだと思う。前作の時も、アルバムなんか比にならないほどの深みを持ったライブだった。
そんな彼女の歌声を聴けるのが、とても楽しみです。
ところでNakamuraEmiは男性のことだって歌っちゃうんだぜ
女性にフューチャーした曲が大半を占める彼女の楽曲たちですが、実は、男性のことを歌ったものだってあるのです。
男性のことを歌った「スケボーマン」
夫もわたしも大好きなこの曲。2017年の中津川のフェスで聴いて、涙が止まらなかった曲。
男性には、こちらも激推ししておきます。
30歳を過ぎた男友達と再会した時に、
「仕事,結婚,子供,親,やりたいこと」
自分の軸をどこにおくのか悩んでいるのを見て、
女性とはまた違う決断をする時がきてるんだなと感じました。
そんな時、街でスケボーに乗っている男性とすれ違うことがよくあって、
沢山の交通手段がある中、スケボーを選んで乗っているというのは、
シンプルだけど男性の芯の部分にリンクしている気がしました。
どの道を選んでも、それを正解にもっていくのは女性の方がきっと上手い。
でも、スケボーが道路とこすれる荒い音は、
俺はこれを選ぶ。
俺はこれで進んでいく。
という男の人の決断の重みのように響いて、
この歌を書くきっかけとなりました。